F# で作成したクライアント アプリケーションに対し、WiX を使用して Windows インストーラー パッケージ(msi ファイル)を作成、デプロイ(配布)するサンプル。
「Hello, F#!」するだけの簡単なコンソール アプリケーションを、FSharp.Core.dll を含めてデプローイするためにパッケージングする。[プラットフォーム ターゲット]は x86 とする。
とりあえず Visual Studio でソリューション開いてビルドすれば msi が得られる。残念ながら、Express を使っている人は Wix のプロジェクトが開けない、Visual Studio でビルドできないと思われるので、バッチ ファイルをあわせて用意した。HelloFSharp プロジェクトを Release ビルドした後で、HelloFSharpSetup\build.bat を実行していただきたい。あるいは、[ビルド後イベントのコマンド ライン]を使用してもよいだろう。
で、あと、WiX 基礎文法最速マスター的な何か。
WiX Toolset とは Windows Installer XML Toolset の略称。WiX はウィックスと読む。XML から Windows インストーラー パッケージを作成するためのツールセットであり、Microsoft 初のオープンソース ソフトウェアとしても知られる。
XML ベースの wxs ファイルを記述し、candle および light コマンドを通じて msi ファイルを生成する。candle と light は、それぞれコンパイラとリンカに相当する。wxs ファイルを candle コマンドで wixobj ファイルに変換し、さらに wixobj ファイルを light コマンドで msi ファイルに変換する。
製品版の Visual Studio がインストールされていれば、プロジェクト テンプレートに[Windows Installer XML]の項目が追加される。[Setup Project]を選んでソリューションにプロジェクトを追加。インテリセンスのサポートを受けながら、Product.wxs を編集すればよい。Express 勢は手書きでがんばれ。
なお、Setup Project は、デプロイ対象のプロジェクトの後にビルドされる必要があるため、ソリューションのコンテキスト メニューから[プロジェクト依存関係...]を適切に設定しておくこと。当たり前ではあるが、忘れても気づきづらく、うっかりすると、一つ前のビルドがパッケージングされてしまうので注意されたい。
wxs ファイルの構造は、大まかな以下のようになる。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<Wix xmlns="http://schemas.microsoft.com/wix/2006/wi">
<Product>
:
:
</Product>
</Wix>Wix タグと Product タグで全体を囲う恰好だ。そして、Product タグの中に、任意のタグとそれらの属性を記述していくことでインストーラー パッケージの定義を行うのであるが、Product タグの中にすべての定義を詰め込むと、見通しが悪くなってしまう。これを解決するために Fragment タグがある。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<Wix xmlns="http://schemas.microsoft.com/wix/2006/wi">
<Product>
:
:
</Product>
<Fragment>...</Fragment>
<Fragment>...</Fragment>
<Fragment>...</Fragment>
</Wix>Fragment タグを使えば、定義を分割して記述することが可能になる。各 Fragmentタグは、複数の wxs ファイルに分割することもできるので、大規模で複雑なプロジェクトではより効果的だ。
では Fragment を使って実際に書いてみる。Fragment タグの中に Feature というタグを置きたい。しかしながら、困ったことに、Feature タグは Product タグの要素として定義する必要がある。
<Product>
<Feature Id="ProductFeature">
:
:
</Feature>
</Product>そんなときは参照タグを利用する。Feature タグには、それを参照するための FeatureRef タグがある。Fragment に Feature を定義しておき、Product からは FeatureRef で参照すればよいのである。
<Product>
<FeatureRef Id="ProductFeature" />
</Product>
<Fragment>
<Feature Id="ProductFeature">
:
:
</Feature>
</Fragment>参照関係の紐付けは、Id 属性によって明示する。このような参照用のタグは、参照先のタグに応じた専用のタグとして用意され、たとえばこれ以外にも、Directory タグを参照する DirectoryRef タグや、Component タグを参照する ComponentRef タグなどがある。
Windows インストーラーは、同製品の同バージョンを重複してインストールしないよう検出する。また、同じ製品の上位バージョンはバージョンアップ インストールをする。このような機能の実現のためには、グローバルに一意な識別である GUID が必要となる。製品のための情報を定義する Product タグにおいて、Id 属性と UpgradeCode 属性に GUID を設定する。
<Product Id="*" Language="1041" Codepage="932"
Name="Hello F#" Version="1.0.0.0" Manufacturer="OreOre Corp."
UpgradeCode="70b58464-5acc-49ab-90fa-fdf0a224a357">
:
:
</Product>Id 属性は、当該製品の当該バージョンを一意に識別するための GUID である。ここでは * を指定したが、そうすると、ビルドごとに GUID が自動生成される。UpgradeCode タグは、当該製品を一意に識別するための GUID であり、一度付けた GUID をずっと使い続ける必要がある。すなわち、UpgradeCode が同じで Id が異なる場合に、Windows インストーラーはそれをバージョンアップだと判断する。
GUID は世界中で一意でなければならない。そのため、自分の製品のためには自分で GUID を生成する必要がある。Id には * による自動生成が使えるし、UpgradeCode に関しては VS テンプレートによって自動で差し込まれる。明示的に指定したい場合は VS のメニューから[GUID の作成]が使用できる。決して、どこかの誰かのコードを丸ごとコピペして GUID を衝突させたりしないこと。絶対に。
インストーラー パッケージにどのファイルを含めるか、そしてそれらはインストールしたときにどこに配置されるか。これの定義には、インストール時のフォルダー構成を示すようにして、Directory タグの入れ子を記述する。
<Directory Id="TARGETDIR" Name="SourceDir" />
<Directory Id="ProgramFilesFolder">
<Directory Id="INSTALLFOLDER" Name="Hello FSharp">
:
:
</Directory>
</Directory>
</Directory>それぞれの Id 属性を見よう。TARGETDIR は決め打ちのルート要素で、ProgramFilesFolder は Program Files フォルダーに対応する。INSTALLFOLDER が、配布対象のアプリケーションのためのフォルダーで、Name 属性によってディレクトリー名を指定する。よって上記の定義では、通常 "C:\Program Files\Hello FSharp" ディレクトリーにインストールが行われることになる。
気を付けておきたいのは、ProgramFilesFolder が示す Program Files は x86 用ディレクトリーであるということだ。つまり 64bit OS において、ProgramFilesFolder は %ProgramFiles(x86)% を示すのである。x64 環境での %ProgramFiles% を指定するには ProgramFiles64Folder を使用すること。また加えて、x64 向けのパッケージングには、candle コマンドに -arch x64 オプションの指定が必要となる。
なお、ProgramFilesFolder や ProgramFiles64Folder のような予約された Id の一覧については、こちらのページを参照してほしい。
さて、Hello FSharp ディレクトリーの中身だ。インストールされるファイルは、それぞれ Component タグで括った File タグによって列挙する。
<Component Id="HelloFSharp.exe" Guid="*">
<File Id="HelloFSharp.exe" Name="HelloFSharp.exe"
Source="..\HelloFSharp\bin\Release\HelloFSharp.exe" KeyPath="yes" />
</Component>
<Component Id="HelloFSharp.exe.config" Guid="*">
<File Id="HelloFSharp.exe.config" Name="HelloFSharp.exe.config"
Source="..\HelloFSharp\bin\Release\HelloFSharp.exe.config" KeyPath="yes" />
</Component>Component はインストールの単位であり、インストールする複数のリソースを取りまとめるものである。さしあたりそのリソースとは File であるが、1つの Component ごとに1つの File を含めることが推奨されている。なぜなら、Windows インストーラーは、スモール アップデートと呼ぶ一部のファイルだけを入れ替えるインストール、いわゆるパッチ適用の機能をサポートするのだが、そのためには、ファイルの一つひとつが入れ替え可能なインストールの単位となっているべきだからである。
File タグは、Source 属性で配布対象のファイル パス(つまり、開発環境でのパス)を指定し、Name 属性でインストール先でのファイル名を指定する。Id 属性は一意な識別子であるが、通常は Name 属性と揃えておけばよい。別フォルダーに同名ファイルがあるような場合は、重複を避けるために適当なサフィックスを付けるなどして対応すること。KeyPath 属性には、1つの Component ごとに1つの File を含めるというベスト プラクティスを守っている場合、必ず yes を設定する。KeyPath 属性が yes のタグは、その Component が正しくインストールされているかどうかの判断のために用いるものであることを意味する。
Component タグは、Id および Guid 属性を持つ。Id 属性は、ComponentRef で参照するために使う一意な識別子である。ここでは File の Id と同じでよい。対して Guid 属性は、パッチ適用時にそれを一意に識別するための GUID である。Component の Guid には * を指定して GUID を自動生成することができて、これは KeyPath 要素である File のインストール先ディレクトリーとファイル名に基づいて決定される。よって、Component が含む File を変更しない限り、同じ GUID が付番される。
こうして定義された Directory 構造は、インストーラー パッケージにどのファイルをどんな構造で含めるかを定義したものに過ぎない。それらの内、どれを実際にインストール先に展開するかは、別途、Feature タグによって定義する必要がある。
<Feature Id="ProductFeature" Title="Product Feature" Level="1">
:
<ComponentRef Id="HelloFSharp.exe" />
<ComponentRef Id="HelloFSharp.exe.config" />
:
</Feature>一見すると、Directory と Feature は無駄な重複定義のようにも思える。しかし、おそらくはあなたにも、標準インストール、完全インストール、カスタム インストールのどれにするかインストール ウィザードに聞かれた経験があるだろう。これはつまり、そのために必要なしくみである。
インストール時にほぼ必須の機能として欲しいものに、スタート画面(スタート メニュー)へのショートカットの登録が挙げられるだろう。これには、予約された Id である ProgramMenuFolder を使用して、その Directory 構造を定義する。
<Directory Id="ProgramMenuFolder">
<Directory Id="HelloFSharpProgramsFolder" Name="Hello F#">
<Component Id="HelloFSharpShortcut" Guid="*">
<Shortcut Id="HelloFSharpStartMenuShortcut" Name="Hello F#"
Description="Hello F# はこんにちはするプログラムです。"
Target="[INSTALLFOLDER]HelloFSharp.exe" WorkingDirectory="INSTALLFOLDER" />
<RemoveFolder Id="HelloFSharpProgramsFolder" On="uninstall" />
<RegistryValue Root="HKCU" Key="Software\OreOre\HelloFSharp"
Name="installed" Type="integer" Value="1" KeyPath="yes" />
</Component>
</Directory>
</Directory>Component には3つのタグが含まれる。Shortcut タグはショートカットそれそのものであるが、他の2つは何か。RemoveFolder タグは、文字通りフォルダーの削除を行う。On 属性でアンインストール時に、Id 属性で "Hello F#" フォルダーを、削除することを指定している。自身のショートカットのために作ったフォルダーを、自身のアンインストール時に行儀よく消す、という定義である。RegistryValue タグはレジストリーに値を登録する。ここで重要なのは KeyPath 属性だ。ショートカットのためのこの Component が正しくインストールされているかどうか、その判断のためにレジストリーを使用しているのである。
Shortcut タグの Target 属性にあらわれる [...] なる記法についても解説しておこう。Directory の Id を角括弧(ブラケット)で括って示すことで、その Id のパスを展開することができる。すなわち、"[INSTALLFOLDER]HelloFSharp.exe" は "C:\Program Files\Hello FSharp\HelloFSharp.exe" のように展開される。一方で、WorkingDirectory 属性には Directory の Id を指定することになっているため、[...] で括らずともパスが解決される。